メーカー選定段階で既に疲れ果てた、まだ序盤だというのに。
特にメーカーさんに拘る理由は無く、息子の話を聞いて地元の工務店のSC工法も調べたが、
最終的には木造軸組み工法で大手の住友林業と一条工務店さんから決めることになった。 各社営業さんには申し訳ないことで好きなやり方ではなかったが、 一方がダメなら他方に決めようと2者択一で進めることにし、そして両社共に難しければ無理して進めることでもないので、 1年や2年は凍結しようという考えで我が家は一致した。 基本的な違いは、前者は構造柱や梁に集成材を、耐力壁に独自の「きづれ」パネルおよび透湿性のよい構造合板(大建工業製ダイライト)を、 後者は構造柱や梁に無垢乾燥材、耐力壁に構造合板と筋交いを使っている。 集成材か無垢材かについていろんな議論がある。 集成材は強度的に勝り狂いが少ない反面、無垢材ほどの実績がないので剥離など耐久面で絶対安心と言い切れるかは長い年月を経ないと分からない。 無垢材はその性格上、ひび割れ・反り・節の抜けなど止むを得ないことで、当初の狂いは多いものの年数が経つにしたがい強度が増すし、 和風を好み木への拘りある人はこちらを選ぶそうだが、現代風の家にすると無垢材の良さが表面に出てこない気がする。 我が家はそこまでの拘りはなく、息子家族はまったくの無関心。 一条工務店の「夢の家」は構造的にも重量感があり、梁は太く柱はすべて4寸の無垢材、 内部の高級感も魅力的な点が多かったことは前述の通り。 一方の住友林業は強度のある集成材を使うので無垢材ほど太くないが、柱はヒノキ集成材で隅柱4寸、管柱3.5寸を基本としながら、 たとえば真壁和室など柱の見える箇所は要望に応じて4寸柱にしてくれる。 強度的には集成材の方が勝り、同じ太さなら無垢材に比べて1.3倍以上の強度が得られるという。 あとで監督さんから聞いた話だが同社で集成材の柱を使うようになったのは比較的新しいと言い、 特長といえば外壁耐力壁に「きづれパネル」を使っていることくらいだとも言う。 また、同社では通し柱の断面欠損を嫌ってすべて管柱で構成し2階の柱との接続は構造金物で緊結していると言うから、 この点は他社軸組み工法と違うようだ。 頻繁に伝わる地震情報に不安を抱きながら、我が家はとにかく耐震性、耐久性を優先に考え、 地域の気候環境に恵まれていることから断熱性はそれほど重視しなかった。 耐震性を優先にするならツーバイフォー工法もあったが、ここは木造軸組みの中から選んだ。 実際には各社で大きな差異は無いだろうし、立派に記載されたカタログ性能は目安程度に考えると、 あとは建て方や気分的な差異だけだろう。 むしろ工事現場でのバラツキを前提に、安全率をどの程度まで考慮した設計になっているかの方が気になる。 この点は両社とも未知数。 免震構造も視野に入れてみたが、まだ実績が少なく耐用面でいろんな声が聞こえてきたのでここは耐震構造で進めることにした。 保証期間はあまり選定基準にはならないかもしれない、どのメーカーも殆ど同じように躯体の保証期間を20年(10年後に有償保守を実施した場合)に設定しているが、 一条工務店だけは自信があるのか30年保証を設定していた。 金額面では、どのメーカーに対しても値引交渉なるものはすることなく、 メーカーから提示される見積り額を信頼して予算との相談は仕様面で調整するように考えた。 一条工務店は標準仕様の中から不要な仕様を落とす方向、住友林業は標準仕様にオプションを追加する方向、 という感じで最初の見積もりの出し方が異なったため、住友林業はどうしても予算アップの方向に働いてしまった。 さて、過去のいろんな経緯がある中で両社の営業さんにはご苦労をお掛けし、とても親しくしていただいた。 |
いろんな出会いはあろうがメーカー選定のきっかけは、営業さんのきめ細かな対応やプレゼン力、整合性ある対話、
などが信頼感を増幅させ、更に営業さんの社内的影響度などによって決まるだろうと思った。
メーカー選定チェックポイントの一項目だろう。 本来なら設計基準や現場でのバラツキに対する安全率の捉え方など構造的なところを概念的にでも知りたかったが、 この段階では外見だけで本質的なところは何も伝わってこない。 これらは家を建てる過程で次第に分かってくること。 同じ家を建てるにしてもいろんな要因によるバラツキがあるのは当然だが、その許容範囲がしっかり把握され、 それが安全率として設計に反映されていれば安心できるだろう。 ここまでは引退後の暇な親父が関わってきたが、実際のメーカー選定は息子家族に任せることにしていた。 一条工務店さんは急がなくてよい、住友林業さんは結論を急ぐそうだ。 両社とも信頼できる健全な企業である。 さあ、どうする ・・・・・・・・。 そして住友林業に決まったのが2005年6月8日のこと、当初は親子で嫌っていたのに、 やはりベテラン営業さんに代わってからその影響が大きく寄与したのだろう。 行動開始から7ヶ月経過したときのことだった。 早速に一条工務店の営業Kさんにお会いし丁重にお断りすると共に約2ヶ月間ご尽力いただいたことに感謝した。 他社と同様、住友林業にも多くの商品名が並ぶ、「GODAI ・・・」という商品シリーズだったようだが、 どこがどう違うかよく分からないし、関心も無い。 力学が好きなためか自然と構造体に、そして住友林業の耐力壁の構造に関心が向く。 長丁場のメーカー選定だけで疲れ果てたが、その間に建築基準や耐震構造の性能、 鉄筋コンクリートの特性、そして建材や接合金物、など多くのことが勉強できた。 いろんな経緯を辿って最終的には住友林業に決まったが、さて住友林業さんってどんな会社だろうか、 営業Sさんの人柄から察するに誠意をもって家造りをしていただけると確信していたが、 カタログ性能よりTQCの浸透した企業であることを、そして事故もなく無事に完成することを願った。 住宅建築は監理が命とも聞くが、今はそれに相応しい工事を願うのみ。 建築担当の現場監督さんが決まり紹介された。 そのとき彼が言った立派な言葉、 「設計図通りに造るのが我々の仕事だ」。 さすがメーカーさん、安心して依頼できると思った。 ところが終わってみると「あれぇ!」事件が意外と多い。 最初の言葉は一体何だったのだろうか。 |
迷った末に縁あって住友林業に依頼することになったが、お世話になった一条工務店の営業Kさんは好印象だった。
他のメーカーの営業さんはきちんとした制服姿でやってくるが、この営業さんは作業着でやって来る。
同社の高級感にすっかり魅せられてしまったこともあるが、家造りが本当に好きな人という印象だった。
実直そうで他社の悪口を決して言わず一条の特長を熱っぽく語る。
家造りへの拘りがあり、メーカー選定を急がせない、普通の営業さんに有りがちな無理強いをしないなどの余裕さえ感ずる人だった。 営業さんながら自分で担当した家の工事現場は常に見て廻るといった責任感の強そうな人だと思った。 近くに住む一条工務店で建てた人の家を尋ね見せてもらったこともあるが、家人だけでなく近隣の評判も印象よく感じた。 結果的には、一条工務店の営業Kさんには丁重にお断りすると共に約2ヶ月間ご尽力いただいたことに、 そして「大変なこともあるでしょうが、素晴らしい家を建ててください」との丁寧な言葉に心より感謝した。 同社ではお二人の営業さんにお世話になったが、お二人とも経験豊かで好印象だった。 最も好感を持ったのは営業Kさんの言葉に濁りがないと感じたことで、学ぶものがあった。 |
メーカー選定には耐震性、耐久性を重要と考えていた。 近頃の家は断熱性や機密性が格段に良くなっているが、
その反面、大敵である湿気から家を守る構造がどうなっているかを勉強した。
この点、どのメーカーも計算上は通気性を考えて設計していると言うけど、実際にそれが物理的にどう確保されるかよく分からない。
我が家は2Km ほど先に海があり浜風などで比較的湿気の多い場所と考えられるので、通気性を充分に確保できる家にしたかった。![]() きづれパネルの構造は、外壁の幅広い範囲で一様に通気性が確保できそうで、結露を抑え湿気に強いので耐久性に優れていると言えそうだ。 更に良いことに他の構造合板に比べて公表値では1.3倍の剛性を持ちながら30〜40%軽量で、 耐震性では実験レベルながら構造合板より30%高い壁振動を得たという記述に注目。 同じ家なら気持ちだけでも耐震性を向上できたら都合がよい。 このきづれパネルは製材するときに出る切れ端や間伐材を利用することで木材資源の有効活用を図っているとのこと。 そして、このパネルは国産杉材を使っているそうで、杉の弾力性が多少なりとも地震エネルギーを吸収してくれそうな気がした。 また、きづれパネルは軸組壁倍率2.5の耐力が認定されているそうだが、住林の実験では2.8を確認しているという。 しかし、建築中に気付いたことだが、パネル自体の壁倍率が2.8といっても柱に固定するときの釘やビス打ちのバラツキで影響されるだろうが、 この点をどう考えるのだろう。 ビスの打ち損じなど実際にぞ〜っとする現場も見てしまった。 ![]() 住友林業では、壁の一部に破損が生じても急激な耐力低下になりにくいと言っているが剥離が発生しても同じことが言えるだろうか。 まだ歴史の浅い耐力壁で、2003年から全面採用したとのことだが、 この点を監督さんに質問してみると、住友林業では剥離が議論になったことを聞かないという。 つまり仮に接着が剥離しても耐力壁として劣化するとは考えていないそうだ。 事実なら安心できるが根拠は不明。 もう一つ、きづれパネルの柱への釘打ちは150mmピッチになっており構造合板に比べてピッチが粗く、 それだけ釘の打ち損ないがあると耐力に影響するのではないかと想像してしまうが実際のことは分からない。 つまり、規定壁倍率を確保するのに釘の打ち損じがどの程度まで許容できるかを明示すれば説得力がありそうに思うのだが何故か不明瞭。 きづれパネルの内側は一面に防湿フィルムで覆われ、室内への湿気侵入を防いでいる。 その他の点では、どこのメーカーさんであれ差の無い話だが、 一般論として屋根も軽い方がよいので屋根材は軽いコロニアルタイプに、外壁仕上げも重そうなサイディング仕様を避け、 軽そうなモルタル仕様にした。 ところが後で監督さんに聞いてみるとモルタルもサイディングと同程度の重さになるとのことであった。 しかし監督さんによればサイディングは後のメンテナンスが意外と大変だ、ここはモルタルにして良かったという。 (屋根材の想定耐用年数は、瓦材で60年、スレート材で30年位を目安にするそうだ。) 気がかりな耐震性能については設計段階で、或いは建築過程で徐々に分かっていくことで、 メーカーさんの考えや品質管理手法に任せるしかない。 |
契約後から着工合意に至る間、何かと情報が伝わりにくいと感じたこともあったが、
完成に至るまで営業・設計・監督・棟梁さんに大変お世話になり外構を含めて事故もなく、無事に完成していただいた。 住まいづくりの知識、耐震性や耐久性にかかる建物の構造上のチェックポイントなど最小限のことは知っておきたい。 また、建築基準法の歴史を辿ってみると意外と構造上の考え方や問題点などが分かってくる。 これら家づくりに関する情報源は、柱や梁材、構造用合板、金物の性格、耐震強度のポイント、 コンクリートの品質、そして品確法のことまで、すべてインターネットを介して詳細を知ることができ、偏った単行本など買わなくて済んだ。 当初は建築用語が分からない。 昔から伝わる大工さんの用語だろうが、言葉で聞いてもよく分からない。 そんなときインターネットから検索した用語集が図解入りで理解し易かった。 我が家は工事現場に近いところに仮住まいを構え、出来る限りデジカメ持参で現場へ通った。 大工さんが一所懸命作業している中へ入っていくのは邪魔するようで気が引けるが構わず見せてもらう。 現場は建材が方々に置かれ、木屑などのほこりが舞い、環境的にも大工さんは大変そう。 中へ入ると大工さんから、ゴチャゴチャしているので気をつけてくださいと声をかけられる。 確かに足の踏み場を探しながら注意して歩かねばならぬときもある。 整理整頓はどこへ行ったんだ、言っていることとやっていることが違うではないか。 ![]() 詳しく見ていくうちに不安が出てくるのも困ったものだ。 欠損が見つかると、これで構造上問題ないか気になるが、 施工バラツキと安全率との関係について確かな説明が得られず、 結局は大工さんや監督さんの判断に委ねることになるだろうと想像する。 気がかりなところは指摘すれば必ず直してくれるから有難い。 |