建築工事
地縄張り  地下車庫や擁壁の工事が終り、いよいよ建築工事に入る。  外構工事の方は全体がよく見渡せるので分かり易かったが、建築はそうはいかないだろうと予想する。
 阪神大震災の倒壊原因の代表的なものに耐力壁の不足が挙げられていることから、 この辺りのことを気遣って壁倍率と偏心率は設計時によく確認したが、設計者からは丁寧な説明が得られなかった。  とりあえず品確法で最高の等級3は余裕をもってクリアーしている。 後は建て方の問題だろう。  設計基準に則り、負のバラツキが少ない家であって欲しいと願う。

 建築工事に入った或る日、監督さんに変心率の算出条件について尋ねたときのこと、 監督さんの答えは「我々は、如何に設計通りに建てるかが仕事だ」と、そっけない返事だったが、 おそらく厳密な監督下で建方が進むだろうと期待する。

 建築は外構工事終了直後から「地縄立会い」=>「木枠組み」=>「掘削と砕石」=>「配筋と型枠」=>「コンクリート打ち」=>「基礎完了と配管」=>「土台敷き」=>「建方準備」と、 基礎工配筋 工定表にしたがって手際よく工事が進められた。

 いざ建築に入ってから現場に足を運び、監督さんからいろんな話を聞いていると、 前提の多い計算値と実際とではかなりの差異を感じた。  しかし、どんなバラツキがあってもその許容範囲に見合うだけの安全率を確保した構造になっていればよいことだろうと思うが、 どうもそのことは何も伝わってこないので、あとは監督さんの判断に委ねるしかない。

 工務店さんは基礎工事が最も大切な工事だと言い、監督さんが厳しい目つきでチェックしている。  1階部分の柱や梁 基礎全体がユニット化されているためか、コンクリートかぶり厚や配筋など実に正確だった。  基礎鉄筋の下には防湿フィルムが敷かれ、コンクリート中性化抑制に役立っている。

その基礎工事が終わると土台工事が始まり、並行して外回りの配管工事も行なわれた。  そして建材が徐々に運び込まれるようになると、慌しい中にも手際よさを感じ、 更に足場が組まれるといよいよ建築スタートの雰囲気が漂ってくる。

 棟上げには2日間かかり、いずれも天候に恵まれた。 初日は1階部分、2日目が2階部分と屋根小屋・野地板取り付けまで行なわれた。  棟上2日目 昔ならここで上棟式と云うことだろうが、監督さんに聞くと最近はほとんど略しているとのことだったので関係者に祝儀を渡して終わりにした。  念のためお酒を用意しておいたが振舞う場面ではなかった。

 今後住まわしてもらう我が家の構造がどうなっているかを知ることも必要であり、 棟上げ直後から構造体の見える部分は柱・梁・屋根小屋から接合部や耐力壁まで確認する。

 棟上げが終わるや早速に現場通いが始まり、大工さんに気遣いながら手当たり次第に見て廻った。
我が家は屋根を初めて寄せ棟にしてみたでの、その構造がどうなっているか最初に見た。  2階屋根小屋 右の写真で見える屋根の荷重は、棟木と水平方向には棟木・母屋・桁の順にかかって分散され、 棟木と垂直方向には棟木・母屋の荷重を小屋束から梁へ伝える。  棟木(むねぎ)と並行に斜めに下る荷重は桁(けた)が支えている。
※:母屋(おもや)は垂木の下にかけた部材。

 小屋束・棟木・母屋などはカスガイ結合になっており、 改良はされているだろうが昔の工法との違いが分からない。  よく見ると垂木の両先端は、風圧から屋根を守るハリケンタイで結合されており、多少の改良があるようだ。  2階天井の梁には火打ち梁金物が各所で使われている。  この辺りのことは、木造軸組み工法ではどのメーカーさんも同じだそうだ。  因みに、「子はかすがい」という言葉は、「子は両親を繋ぐ」という意味で、カスガイ金物(ホッチキスの針を大きくしたようなもの)から出た言葉らしい。
ハリケンタイ
 建物全体の柱や梁材は集成材になっているが、屋根小屋は無垢乾燥材、垂木は集成材が使われていた。
その垂木の集成材は雨水を配慮してか、見たところレゾルシノール樹脂の接着剤を使っている様子だった。

 最初のうちは気づかないことでも慣れてくると細かいところまで調べたくなる。
そして調べるうちに、「あれぇ!事件」に遭遇し、 1階 1箇所で欠損が見つかると他の箇所にもあるだろうと想像して探しはじめる。 あそこもここも、やはり出てくる。

 事前に得た知識では「耐力壁を取り付ける釘やビスが適正でもピッチが不適正とか、 打ち損じなどは構造耐力に影響するのでよく確認する」ということを度々聞く。  そこで我が家でも確認してみると、「あるねぇ〜」。
外壁の耐力壁である「きづれパネル」は内側で防水フィルムが張られ、150mmピッチで釘打ちされているが、手の届く狭い範囲で見渡してみると、 やはり打ち忘れやひび割れが数箇所あった。 指摘しておいたので、おそらく後で直してくれただろう。  工務店さんと監督さんがそれぞれチェックしているがどうしても見落としは出ると言う。 
一方、釘の頭がパネルに深くめり込んでいることはダメと聞いていたので調べてみると、やはりそのような箇所が目立った。  監督さんに聞くと、釘打ち空気圧の調整が強すぎたり間柱に打ち付けると深くめり込むことがある、 といった結果説明だけで特に問題視している様子はなく、耐力壁としての影響はないとみているのだろうか ?。

 床の剛性も耐震性を確保するうえで重要といわれているがあまり確認していない。
棟梁さんに尋ねると、きづれパネルと同じ65mm長の釘を、床構造合板の縁周辺を150mmピッチで、 合板の中間にある根太には200mmで打ち付けているとのこと。  一方、24mm厚の耐力床パネルは硬いためか釘の頭が深くめり込んでいる様子は見当たらなかった。

 屋内用耐力壁(大建工業製のダイライト板)を固定するビスの打ち損ない(ビスの飛び出し、柱の裂け目)も異様に映る。  耐力壁の打ち損じは壁倍率低減に結びつくと想像できるので、影響度は分からないが念のため直してもらった。  監督さんからみると些細なことでも、こちらで気にすればすぐ対応してくれる。  1階和室付近 時には本部の指示に従って対応するといい、 今回はビス打ち増しの指示があったと言うがその効果は分からない。
 このようなビスの打ち損じは、幅45mmの間柱を介して耐力壁を繋いでいくに箇所で発生しやすく、管柱で繋ぐ箇所で発生することはない。  後で見ると打ち損じ跡はきちんと補修されていたが、単に気休め程度かもしれない。  (我が家の「あれぇ!」事件簿の「耐力壁のビス打ち損ないとひび割れ」を参照

 一箇所で欠損が見つかるとその周辺に連続して見つかる確率が高いことは容易に想像できる。  すでに隠れて見えない箇所はどうだろうか、ある種の欠損がある分布で見つかれば、潜在する欠損もその確率分布で推定できる。  その潜在欠損があっても耐力的に設計時の基準を満たしていれば心配することではないが、その点がよく分からない。  パンフレットを見ると安全率を見込んで云々の記載はあるが、かなり曖昧な表現になっており、条件等が不明瞭である。

 特に昨今のように耐震問題がテレビなどで報道されると気になることも多くなり、 監督さんには小さなことでも素人には大きな欠損にみえてしまう。  それは、欠損が耐力面でどの程度影響するか分からないからである。 同じことを何度か質問すると、 「気にされるならやり直しましょう」と言う。 その理由は気がかりな点をあとに残されるくらいなら、 やり直した方がよいということのようだ。 構造的に問題がなく単に気分だけのことなら無駄なことまでする必要はない。  この辺りに経験則で言う監督さんとはじめて見る素人の間でギャップがあるようだが、監督さんはそういう素人に気遣うのだろう。
真壁和室
 現場は漠然と見ていても飽きない。 特に真壁和室の作業工程をみると結構な手間のかけ方が伝わってくる。  監督さんは、棟梁の腕の見せどころだと言う。 確かに時間をかけてじっくり作業する様子が分かる。  この真壁和室はメーカーさんのショールームを見て真似したようなものだが、一応は気に入っており、 歳の性もあり安らぎの場として大事にしたい。  寝室は、初めて聞く名前の大壁和室にしてみたが、老人にはやはり真壁和室の方が落ち着く。
 玄関ホールには腰パネルを入れるか迷ったが、 玄関 実際に取り付けてみると玄関へ入ったとき落ち着いた雰囲気が楽しめるので正解だった。 値段もそれほど高くは無い。
玄関ホールは以前の家より狭く感じたが横の広がりがあるので住んでみると違和感はなくなった。
また、フローリング床全面をフロアーコーティングしてもらったのは正解だった。  保護効果10年位とのことで、その間ワックスがけが不要だそうだ。


尚、住友林業では有限要素法を使い、地震エネルギーに対して構造がどう影響受けるか解析している旨をパンフレットで記載してあり強い関心を持ったが、 我が家で実際に耐震性をどう評価したのか知ることはできなかった。